日本で一般的に名前が売れている大学の多くは、大学院や企業から留学するのに適した研究型の大型総合大学です。Forbesのようなランキングでは、このような大型で大学院が中心的な役割を果たす総合大学が有利になるので、学部生で留学したい人が参考にするのにはあまり適しません。アメリカの大学ではそのまま大学院に進まないことも多く、大学院での研究功績が大きな配点になるいわゆる学術ランキングも、あまり参考になりません。
以下が、Forbesのランキングの基準です。学部教育の質よりも、卒業生が社会的にどう評価されているのか、アメリカでの就職を考えた基準になっています。
- Student Satisfaction (25%) 学生の大学に対する満足度。
- Post-Graduate Success (32.5%) 卒業後の学生の「成功率」。
- Student Debt (25%) 卒業後の学生ローンの返済状況。
- Graduation Rate (7.5%) 4年以内で卒業する学生の割合。教育の手厚さ。
- Academic Success (10%) 卒業後の奨学金とドクターの取得率。
Forbesには留学生が選ぶべき米国の大学ランキングもあります。評価基準は以下のとおりですが、学生全体に占める留学生の割合や増加率を全体の1/4の比重で評価していることが曲者です。選ぶべきではなく、選んでいる大学でしかないように見えます。確かに充実した留学センターや英語学校は期待できます。しかし、こうまでして留学生の単純な多さにこだわるのは、アメリカ特有の事情もあると思います。アメリカの名門大学の多くはPWI: Predominantly White Institutionsのため、海外の留学生が平等に受け入れられない可能性があるからです。
- 教育の質(50%) フォーブスが毎年作成している米国大学ランキングの結果を採用。
- 学生全体に占める留学生の割合(20%) 各大学が米教育省に提出したデータを参照。留学生が多い方が高得点なので、行ってみたら日本人やアジア人ばかりで、これじゃ留学じゃない感が強くなる可能性がある。
- 留学生の増加率(5%) 同上。
- 予定通りに卒業する留学生の数(10%) 6年以内に卒業した留学生の数。教育サポートの手厚さ。
- 外国人学生の関心が高い専攻科目またはプログラムの有無(15%) 専攻できる科目を確認してから大学を選ぶ当事者にとってはあまり意味がない。
Forbesと双璧をなすUS NEWSのランキングはこれです。US NEWSでは、最初からリベラルアーツと総合大学を別々にランキングしています。
- Graduation and retention rates(22.5%): 卒業率と定着率。6年間の卒業率(スコアの80%)と初年度の維持率(スコアの20%)。教育サポートの手厚さ
- Undergraduate academic reputation(22.5%): 学部の学術評判
- Faculty resources(20%):教員のリソース
- Student selectivity(12.5%):学生の選択性。州立大学は不利。
- Graduation rate performance(7.5%):補正された卒業率。
- Financial Resources (10%) 大学が生徒一人あたりに使う資金(教育費、研究費、学生サービス費、関連教育費)。
- Alumni Giving Rate (5%) 卒業後大学に寄付する卒業生の割合。大学生活の満足度。
US NEWSのランキングにも欠点というか見方のコツがあります。学部留学の場合、大学の価値は研究能力よりも教育能力です。教育能力の高い大学で学んだ後、同じ地域の研究能力の高い大学院に行くのがひとつの考え方です。アメリカでは学部と大学院が違うことは普通です。教育能力は卒業率で端的に表しますが、研究型の州立総合大学はあまりその数値が良くありません。US NEWSは大学を以下のカテゴリーに分けてランキングしています。
- National Universities: 総合大学であり、修士と博士課程がある。
- National Liberal Arts Colleges: 学部教育に力を入れており、提供する単位の半分以上はリベラルアーツである。
- Regional Universities: 広範囲な学士課程を持つが、修士課程は限定的で博士課程(修士課程後期)はほぼない。北部、南部、中西部、西部に分けてランキングしている。
- Regional Colleges: 学部教育に力を入れているが、リベラルアーツの単位は提供する単位の半分に満たない。北部、南部、中西部、西部に分けてランキングしている。
一般的にはUS NEWSのランキングの100位以内の大学を選べと言われています。ある意味で妥当な見解ですが、鵜呑みにしてはいけません。一般的に参照されるのはNational Universitiesのランキングですが、そこには当然研究型の大学院を持つ総合大学しか載っていません。学部留学の対象にしたい、私立のリベラルアーツ・カレッジもなければ、公立のリベラルアーツも含まれないのです。学部留学ではNational Liberal Arts CollegesやRegional Universitiesも見たほうが良いです。それぞれ、私立のリベラルアーツ・カレッジと公立のリベラルアーツを含んでいます。
この他特にお勧めのランキングがUS Newsの”Top Public Schools Regional Universities“です。