パーティースクール

学校選びでは、専攻分野や学費、学生数、卒業率など色々なパラメーターを見ますが、ここでは見落としがちな校内の生活環境を考えてみたいと思います。留学フェアで実際に聞いてみるのも良いですが、それができないときは何処を見たら良いのでしょう。私も確信があるわけではないですが、例えばということで。

パーティースクール?

パーティー自体は否定しません。トップの有名校でも総合大学になればパーティースクールと言われている大学もあります。しかし、アメリカでは21歳未満のアルコールの購入や所持を禁止しています。大学院生としての留学なら良いですが、学部生として留学する場合は、あまり好ましい状況とは思えません。ドラッグの危険もあります。学業のために留学したものの、飲酒運転やドラッグの前科ありで就職不能などという悲劇にならないように気をつけましょう。今どきは、この日本でも、まともな会社なら飲酒運転や脱法ドラッグで一発解雇です。

「大学名 party」などで動画検索すると、思わずドン引きな動画にたどり着くかもしれません。例えばUCLAのfraternity(男子のグリーク・システム)「UCLA SIGMA PI party」でも大概ですからね。

2018 Top Party Schools in America

2018 Safest College Campuses in America

今アメリカでは、西海岸やニューイングランドを中心にGateway drugと呼ばれる嗜好用マリファナが解禁されており、足を踏み外す危険と隣り合わせです。医療用だろうが嗜好用だろうが、普通の人はお世話になってはいけないものです。

ニコチンやカフェイン、アルコールと違い、薬物依存は一生治りません。だから、薬物依存という名前で区別されるのです。薬物依存の入り口をくぐってしまえうと、後戻りは一生できません。

薬物は日本で禁止されていますから、常習者になると日本に帰ってきた途端に就職不能の犯罪者です。某元芸能人のように「海外では合法で日本が遅れているだけ」なんて脳みそが空っぽな理屈は通りません。そういう留学生が多いと、日本の企業にとっては非常に大きなリスクですね。留学生を採用したくない企業があってもおかしくありません。痛み止めを海外の親から送ってもらっただけで逮捕され、役員を辞任しなければならないのが日本であり世の中です。君子危うきには近寄らずです。アホほど危険に近付きたがるものです。

最近、有名な外人タレントが大麻を吸った経験があると言っていますが、昔の大麻と今の大麻では純度が全然違うことも忘れてはいけません。

もし私が企業のコンサルタントで、採用担当者から助言を求められたとしたら、「留学経験者を採用するとき、御社にとっての最大のリスク要因はドラッグです。」と言うでしょう。

国家公務員の懲戒処分の指針はこの通りです。「麻薬等の所持等 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。」

依願退職ではなく免職となると、まともな再就職はできません。

地下鉄サリン事件を思い出してください。なぜあんな惨事が起きてしまったのか。頭の良い人が次々にコロッと騙されて、沢山の殺人を犯しました。ファクトという小石を積み上げて正しい塔を建てたつもりだったのかもしれませんが、正しい大局観を持った人から見れば、それはただのねじ曲がった塔でしかなかったのです。

2019年6月25日現在、嗜好用マリファナ(大麻)が州法で合法化(legalized)された州は、Alaska, California, Colorado, Maine, Massachusetts, Michigan, Nevada, Oregon, Vermont, Washington, Illinois の11州です。これに加え、ワシントンD.Cも合法化されています。New York州をはじめとする15州で罰金刑のみの非犯罪化(decriminalized)がされています。

今やカナダは全国で合法になっています。私個人の考えとしては、カナダも以上の11州も、留学先として不適格に感じています。非犯罪化された州も含めると、アメリカは大麻の国と言わざるをえません。

ちなみに、自由化されたと言われるオランダも、個人使用のための製造及び所持は軽犯罪となりますが、実際には処罰されない状況です。

正しい知識は厚生省の「薬物乱用防止に関する情報」で入手してください。

厚生省の見解では、幻覚作用があるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含むマリファナや脱法ドラッグを問題としています。

一方、大麻の成熟した茎(衣料品に使用される指定外繊維「ヘンプ」など)や種子は、日本の大麻取締法の規制対象外であり、発芽しないように処理された種子は七味唐辛子や鳥の餌に使われています。同時に、成熟した茎や種子から抽出されたCBD(カンナビジオール)も規制の対象外となります。また、厚生省でもCBDは直接の問題としていません。

ただし、茎や種子以外から抽出されたCBDは、大麻取締法の対象となり違法ですし、粗悪なCBD製品(ヘンプオイル)の中に無視できない量のTHCが混入していたという事例もあります。大麻取締法の対象でなくても、薬事法違反の可能性もあります。「エピディオレックス」などのCBDを精製した医薬品は、治験での使用しか現在日本では認められていません。

一口に「大麻」と言ってもTHCとCBDでは性質が全く違う一方で、大麻取締法ではその区別ができていません。成熟した茎や種子から抽出されたCBDが今でも合法の日本で、嗜好用大麻合法化とか言っている人たちは、幻覚作用があり依存性もあるTHCを視野に入れています。

もう一度言いますが、医療用大麻としてのCBDの先に、嗜好用大麻としてのTHCがあるのではありません。医療用大麻の中には高濃度のTHCが含まれていることがありますが、それでもこの2つは最初から別れた別の道です。「医療用大麻の次は嗜好用大麻を解禁」という順番で考えてはいけません。海外でもこの2つの解禁は、全く違う理由があります。しかも、嗜好用大麻を解禁する国の事情は日本と全く違います。日本人のあなた、親のどちらかは大麻を使用したことがあるなんてこと、想像もできないでしょう。

また、嗜好用に「わざわざ」使用する大麻といえば、幻覚作用のあるTHCの方に決まってます。CBDでは全然パーティーにならないからです。だから、私が自分の子供に忠告するとしたら、こう忠告します。

「大麻には依存性がないって、わざわざ言うヤツのことは一生信じるな。」

大麻の隠語にはウィード(weed)などがあります。

Alcohol Free、Smoke Freeとは、自由ではなく、禁酒、禁煙のことです。dry campus とは飲酒が禁じられているキャンパスのことです。では、dry campus ならいいのかというと、実態が伴わない campus もあるので難しいところですが、College Drinkingについて保護者が知るべきこと の Choosing the Right College の章に、学校選びのコツが書かれています。

Wikipedia; List of smoke-free colleges and universities

エージェントなしで留学するために参考にした本

本はたくさん読みました。たくさん買いました。以下、買った本のリスト(一部)です。

★★★是非購入すべき ★★購入したほうがいい ★参考にはなる

”International Student Handbook”★★★
・・・必要なTOEFLの点も書いてある。唯一と言って良い留学生用の学校案内。

“Best Colleges”★★★
・・・US NEWSの大学ランキング

“アメリカ留学公式ガイドブック[第2版]”★★★
・・・ビザをとっていざ留学するときに必要。ネットで素人のサイトを見る前に、まず見ておきたい。あとで読み返してそう思う。

“ETS公認ガイド TOEFL IBT”★★★
・・・TOEFL受けるなら買うしかない

“Cambridge IELTS”★★
・・・IELTS受けるなら買うしかない

“Barron’s Profiles of American Colleges”★★
・・・1,650校、意外と参考になった

“Fiske Guide to Colleges”★
・・・約320校、普通。

“The Best 381 Colleges”★
・・・Princeton ReviewのTOP381校

“The Ultimate Guide to America’s Best Colleges”★
・・・TOP300校

“College Handbook”
・・・College Boardの網羅的学校案内。4年制2,200校、コミカレ1,700校。

“Book of Majors”
・・・College Boardから出ている、専攻科目の案内。それほど役に立たなかった。

“Scholarship Handbook”
・・・College Boardから出ている、ものすごい数の奨学金の案内。国内用なので全然役に立たなかった。

“アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準”★★★
・・・アイビーリーグを目指さなくても出願に際して参考になった

“留学で夢もお金も失う日本人~大金を投じて留学に失敗しないために~”★★
・・・UOに合格(条件付き)したけれど、並の奨学金では予算オーバーなのであきらめた。

“ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか? ~日本人が抱く大いなる誤解~”★★
・・・ハーバードを目指さなくても参考になった

“目指せ日米トップ大学ダブル合格―TOEFL JuniorテストからTOEFL iBTテストへ―”★★
・・・Z会発行に負けた。まえがきに泣ける。TOEFL iBT 100を取るための勉強法。

単位互換

UCLAの人気でカリフォリニア州の大学の単位はコミカレを含めて互換性が高いことで有名ですが、そのようなシステムは他の州にもあります。

コミカレからの編入学協定と単位認定(Transfer Articulation Agreements)も別にカリフォルニア州だけの特権ではありません。

希望の大学でTransferring Creditを検索してみましょう。東海岸と西海岸などでは大学のAdmissions Officeと交渉しないといけないこともこともありますが、同じ地域の大学同士なら概ね互換性があります。

打算でアメリカに留学するな

留学サイトで打算まみれのアドバイスが書かれたサイトがあります。

そもそも、打算を優先するなら、Fランでもいいから国内の大学に行くことをお勧めします。高卒でも就職に困らない昨今なら、就職に強いと言われる大学に入学し、1年生のうちから学業はほったらかしで、企業のインターンなどをして就職活動すれば良いのです。

今の世の中はそうなっています。ネームバリューのためにあえてUCLAに行くのは、中途半端な打算です。打算の割には遠回りしています。

アメリカの大学に学部留学をしたい人は、打算を捨てましょう。ハーバードだろうがUCLAだろうがCSUだろうが、留学するからには実力で生きていく必要があると覚悟を決めましょう。打算を捨てられないのなら、国内大学に入学して、TOEFLを72以上取って、交換留学や奨学金で派遣留学することをお勧めします。

そういうサイトに限って軽く「コミカレで必死に頑張れば」とか書いてありますが、結局頑張れなかった学生にはなんと声をかけるつもりなんでしょうか。大きく見積もっても上手く行く学生は数分の1。頑張りが平均的では上手くいかないのです。しかも、その中には英語が得意な帰国子女だって入っているはず。ほんの一握りの成功者の影で、何倍もの敗北者がいるのです。ほんの一握りだから、成功者のサイトは繁盛するのです。そもそも、自分の実力で合格できた日本の高校で平均4以上の内申を取れない人が、急にコミカレで1年生からオールA取るって、どういう奇跡でしょうか。

新卒の留学生に奨学金をくれない州立大学ばかり見ていると見落としがちですが、それ以外の大学では編入(Transfer)よりも新卒(Freshman)の留学生のほうが奨学金の面でも優遇されていることが多いです。また、人気の高い大学、特に私学は、Retention Rate も高くなり、編入する枠が狭くなります。ガバっと広い新卒枠で合格できない人が、より狭い編入枠を狙える状況は自ずと限られ、勝者の裏にはたくさんの敗者がいます。当事者としては「夢がある」の一言で片付けられない現実です。

すでにコミカレに行っている人は、気を悪くするかもしれません。しかし、厳しい条件付きの夢が安易にクローズアップされ、実際にコミカレに行く人が多いことに疑問を感じるのです。実際はコミカレに行く必要がない人に、コミカレに行く必要がないことを改めて知って欲しいと思います。

州立大学の学費

大昔は比較的安いと考えられていた州立大学の学費ですが、今では私立にせまる金額になっています。学費の高騰は、留学生にとってだけではなくアメリカ国内の学生にとっても大きな問題となっており、ここ10数年位に出てきた問題です。逆にいうとそれ以前の常識は参考にならないということです。ネット上では10年前の記事も出てきますが、古い記事を信用してはいけません。

特にAlabama, Arizona, California, Colorado, Florida, GeorgiaおよびHawaiiの各州では、 4年生州立大学の学費が2008年からの10年で60%以上値上がりしています。

州立大学の学費の特徴として、in-state(州内)とout-of-state(州外)があります。留学生はout-of-stateになり、in-stateと比べ2倍以上の大学も多くあります。州立大学のコストパフォーマンスをin-stateで見るのかout-of-stateで見るのかで大きな違いが出てきます。

この2つは、大学を探す時に常に気をつけましょう。

州立大学を選ぶときは、留学生に対しても十分なScholarship(返済不要の奨学金)が出る大学や、差が少ない大学、条件付きで州内学生と同じ学費になる大学を選ぶべきです。あなたをお金という具体的な形で歓迎できない大学は、あなたを必要としていない大学です。例えば、リベラルアーツ・カレッジは学生の多様性そのものが学校の目的につながるので、一定数の日本人留学生を歓迎します。一方で、既に多数の日本人留学生であふれている学校は、新たな日本人留学生を歓迎しない傾向があります。日本人がそのような大学に行くには、就職した企業から派遣されて行くとか、日本の大学から交換留学するとか、とにかく自費で行かない別の方法を考えるべきですし、受け入れる側もそういうスタンスなのです。

在学中に大学から奨学金をもらえれば、履歴書にも書けます。人生全般に言えることですが、自分を高く評価してくれ求めてくれるところを選んでそこで活躍するということは大切なことです。

条件付きでin-stateになる例としては、何らかのアカデミック奨学金を得た人はin-stateになるという州があります。例えば、Texas州は有名で、$1,000の奨学金があれば、権利があります。そのためにわざわざコミカレから始める人もいますが、例えばTexas Stateでは、SAT (Evidence-Based Reading and Writing + Math) が1270かつ、高校で上位1/4に入っていれば、international freshmanでも奨学金がもらえ、その結果in-stateにもなります。Texas A&Mもinternational freshmanに奨学金をくれることがあるようです。残念ながら、University of Texasは、もらえないようです。
ここで注意が必要なのは、そもそも学部の留学生(International Undergraduate Freshman)に奨学金を出す州立大学は比較的少ないということです。このように、学部で留学する人は、学部で留学するための情報を選別する必要があります。単に留学生に人気の州というだけで、学部留学生とって良い州とは限りません。

他には、学内で一定の勤労と一定のGPAをキープすると、in-stateになる大学もあります。アメリカは学生VISAで働くことができない国です。ただし、キャンパス内では働けます。

※私立大学の中には、学費は高いのですが合格してしまえば十分なエイドが得られる大学もあります。元々東大に行けるような人は、そちらも見ておくと良いでしょう。

※東大に行けない人でも、ランキングに乗らないような私立で奨学金をたくさん出してくれる大学があります。留学フェアでこまめにブースをまわれば、「あなたのGPAならこれだけ出せます」と言ってくれる大学が見つかります。

アメリカ大学への合格実績と進学実績

近年、有名進学校で海外大学への合格実績が増えていると言われています。手塩にかけて育てた生徒を、例えば就職に手厚いとか言って、就職活動ばかりで全然勉強しない日本の大学に入れて良いものだろうか、そう思う先生や親御さんが増えていくのは自然なことに思います。

しかし、合格実績はその数字を読むとき注意が必要です。というのも、アメリカの大学合格実績は進学実績と乖離しやすいからです。

注意点として以下のようなことがあります。

  • 出願手数料が高くても1万円前後のため大量に出願できる
  • しかも、1校に1回払うだけ。日本のように試験毎に払わなくて良い。
  • 試験がないので、同時にいくらでも出願できる。
  • コモンアプリケーションのシステムが普及しており、共通の出願申請フォーマットを使って、大量に出願できる。
  • 合格しても入学金は不要な場合が多いので、沢山合格してもある程度の期間は無料でキープできる。
  • ただし、Early Decisionは原則同時に申し込めないので、Early Decisionを利用する学生の合格実績は数が少なくなる。

極端なことを言えば、例えばある学校の合格実績が20校あっても、ひとりで余裕で作れる実績なのです。

逆にいうと、出願の際はコモンアプリケーションを利用して、だめもとで色々な大学に出願することをお勧めします。ただし、Early Decisionは日本で言う「専願」ですから、それは本当に行きたい大学がある場合だけにしましょう。最初はそこが一番と思っていても、もっと良いところから良い条件で合格通知が来るかもしれません。

似たような用語にEarly ActionやRolling Admissionがありますが、これはどちらも縛りがありません。これらのApplyは高校3年の9月頃から始まります。

ToeflやIELTSが十分な人やConditional Admissionで出願する人は、このEarly ActionとRolling Admissionを利用して、9月〜10月に短期決戦することをお勧めします。

ほとんどの大学は、Conditional Admissionで一旦条件付き合格をしておいて、締切までに基準以上のToeflやIELTSを提出すれば、そこで改めて合格扱いにしてくれます。一部の大学はConditional Admissionに奨学金を出してくれませんが、逆に、Conditional AdmissionでもConditionalがはずれた時点からフルの奨学金をあらかじめ約束してくれる大学もあります。

Early DecisionやEarly Action、Rolling Admissionで一旦Reject(=箸にも棒にもかからない)された場合は、同じ大学に再出願(reapply)できません。SATやACTが必要で準備が間に合わない大学は、少し出願を遅らせたほうが良いです。箸にも棒にもかからないわけではないが合格でもない人は、Deferred(保留)としてRegular Decision(一般受験)の結果が出る4月まで保留されます。Deferredの間も、基準点になったToeflやIELTS、より高いSATやACT、追加の功績などを提出して、アピールしましょう。

一方でToeflやIELTSは学業成績ではなく単なる入学条件ですので、条件をクリアすればそれ以上の点数をとっても有利にはなりませんし、Conditional Admissionだからといって選考上不利になることもありません。別に日本の有名進学校でなくても、その高校でGPAを3.4/4.0も取っていれば、アメリカTOP100前後の州立大学程度なら、Conditional Admissionでわりと簡単に合格してしまいます。日本に於いては英語そのものが勉強ですが、アメリカに一旦入ってしまえばそれは勉強のツールのひとつでしかありません。つまり、高校時代は英語ばかり勉強するのではなく、まず全ての教科で3年間を通してGPAをきちんと取ることを優先してください。アメリカの大学だって、条件付き合格の生徒が、急に半年後英語ペラペラになるなんて思っていません。だから、提携している現地の英語学校やExtensionで真面目にしていれば、基準の英語力が付いていなくても、少しくらいはおまけしてくれます(カリフォルニアのように日本人が溢れているような大学は、その限りではありません)。

話がそれましたが、アメリカの大学については、進学実績の方を見なくては実態をつかめません。日本では私立ではなく国公立の合格実績ならある程度実態を反映していると考えられていますが、アメリカでは州立大学でも状況は同じです。

こちらのサイトでは、高校からの海外大学への進学状況(2017年3月卒業)を紹介しています。

日本の高校からの海外大学進学状況

ランキングの見かた

日本で一般的に名前が売れている大学の多くは、大学院や企業から留学するのに適した研究型の大型総合大学です。Forbesのようなランキングでは、このような大型で大学院が中心的な役割を果たす総合大学が有利になるので、学部生で留学したい人が参考にするのにはあまり適しません。アメリカの大学ではそのまま大学院に進まないことも多く、大学院での研究功績が大きな配点になるいわゆる学術ランキングも、あまり参考になりません。

以下が、Forbesのランキングの基準です。学部教育の質よりも、卒業生が社会的にどう評価されているのか、アメリカでの就職を考えた基準になっています。

  1. Student Satisfaction (25%) 学生の大学に対する満足度。
  2. Post-Graduate Success (32.5%) 卒業後の学生の「成功率」。
  3.  Student Debt (25%) 卒業後の学生ローンの返済状況。
  4.  Graduation Rate (7.5%) 4年以内で卒業する学生の割合。教育の手厚さ。
  5.  Academic Success (10%)  卒業後の奨学金とドクターの取得率。

Forbesには留学生が選ぶべき米国の大学ランキングもあります。評価基準は以下のとおりですが、学生全体に占める留学生の割合や増加率を全体の1/4の比重で評価していることが曲者です。選ぶべきではなく、選んでいる大学でしかないように見えます。確かに充実した留学センターや英語学校は期待できます。しかし、こうまでして留学生の単純な多さにこだわるのは、アメリカ特有の事情もあると思います。アメリカの名門大学の多くはPWI: Predominantly White Institutionsのため、海外の留学生が平等に受け入れられない可能性があるからです。

  1. 教育の質(50%) フォーブスが毎年作成している米国大学ランキングの結果を採用。
  2. 学生全体に占める留学生の割合(20%) 各大学が米教育省に提出したデータを参照。留学生が多い方が高得点なので、行ってみたら日本人やアジア人ばかりで、これじゃ留学じゃない感が強くなる可能性がある。
  3. 留学生の増加率(5%) 同上。
  4. 予定通りに卒業する留学生の数(10%) 6年以内に卒業した留学生の数。教育サポートの手厚さ。
  5. 外国人学生の関心が高い専攻科目またはプログラムの有無(15%) 専攻できる科目を確認してから大学を選ぶ当事者にとってはあまり意味がない。

Forbesと双璧をなすUS NEWSのランキングはこれです。US NEWSでは、最初からリベラルアーツと総合大学を別々にランキングしています。

  1. Graduation and retention rates(22.5%): 卒業率と定着率。6年間の卒業率(スコアの80%)と初年度の維持率(スコアの20%)。教育サポートの手厚さ
  2. Undergraduate academic reputation(22.5%): 学部の学術評判
  3. Faculty resources(20%):教員のリソース
  4. Student selectivity(12.5%):学生の選択性。州立大学は不利。
  5. Graduation rate performance(7.5%):補正された卒業率。
  6. Financial Resources (10%) 大学が生徒一人あたりに使う資金(教育費、研究費、学生サービス費、関連教育費)。
  7. Alumni Giving Rate (5%) 卒業後大学に寄付する卒業生の割合。大学生活の満足度。 

US NEWSのランキングにも欠点というか見方のコツがあります。学部留学の場合、大学の価値は研究能力よりも教育能力です。教育能力の高い大学で学んだ後、同じ地域の研究能力の高い大学院に行くのがひとつの考え方です。アメリカでは学部と大学院が違うことは普通です。教育能力は卒業率で端的に表しますが、研究型の州立総合大学はあまりその数値が良くありません。US NEWSは大学を以下のカテゴリーに分けてランキングしています。

  1. National Universities: 総合大学であり、修士と博士課程がある。
  2. National Liberal Arts Colleges: 学部教育に力を入れており、提供する単位の半分以上はリベラルアーツである。
  3. Regional Universities: 広範囲な学士課程を持つが、修士課程は限定的で博士課程(修士課程後期)はほぼない。北部、南部、中西部、西部に分けてランキングしている。
  4. Regional Colleges: 学部教育に力を入れているが、リベラルアーツの単位は提供する単位の半分に満たない。北部、南部、中西部、西部に分けてランキングしている。

一般的にはUS NEWSのランキングの100位以内の大学を選べと言われています。ある意味で妥当な見解ですが、鵜呑みにしてはいけません。一般的に参照されるのはNational Universitiesのランキングですが、そこには当然研究型の大学院を持つ総合大学しか載っていません。学部留学の対象にしたい、私立のリベラルアーツ・カレッジもなければ、公立のリベラルアーツも含まれないのです。学部留学ではNational Liberal Arts CollegesRegional Universitiesも見たほうが良いです。それぞれ、私立のリベラルアーツ・カレッジと公立のリベラルアーツを含んでいます。

この他特にお勧めのランキングがUS Newsの”Top Public Schools Regional Universities“です。

こちらはWikipediaの大学ランキングリストです

リベラルアーツな州立大学

学部生(under graduate)で留学する場合、リベラルアーツ・カレッジはおすすめです。

リベラルアーツ・カレッジのほとんどは私立です。名門のリベラルアーツ・カレッジは、どれもほぼ完璧な Retention rateとGraduation Rate Performanceを誇ります。学生の満足度と面倒見の良さが突出しているのです。その代わりに、どの大学も年間の学費は50,000ドル前後です。学生数が概ね3000人以下のためか田舎でも寮生活費が15,000ドルくらいかかりますので、合計で年間65,000ドル前後です。ローンを組むと地獄を見ます。SATやACTも高得点で、ファイナンシャルニーズがない国内生を圧倒する学力を持つ大変優秀な学生だけが入学できるまさに名門大学です。日本ではアメリカの大学といえばハーバードやMIT、UCLAくらいしか一般には知られていませんが、日本では100人いたら100人知らないようなLiberal Arts Collegeが、アメリカの大学の真髄なのです。

ちなみに、留学生にもNeed blind(ファイナンシャルニーズの有無が合否に影響しない)で、合格した場合100%ファインシャルニーズを満たしてくれるポリシーの大学は、大型の大学でもリベラルアーツを実践しているIVYのBig ThreeであるHYP(Harvard, Yale, Princeton)や、同じく工学系なのにリベラルアーツも実践しているMIT、そしてLittle IVYのLittle Threeのひとつでありリベラルアーツ・カレッジであるAmherst Collegeです。Dartmouth Collegeも2015年までは留学生に対してNeed Blindでしたが今はNeed Aware(ファイナンシャルニーズの有無が合否に影響する)です。このように、とにかく合格すれば100%の支援が得られる大学は高額な寄付金を集めることができる一部の大学だけなのです。

私立でも学費が安い大学や、奨学金を比較的簡単にもらえる大学はあります。しかし、そのほとんどは宗教色の強い大学や、留学生でもスポーツ奨学金を得やすい歴史的黒人大学(HBCU)です。日本では、例えばキリスト教の幼稚園に入って仏教の大学を卒業するような人もいますが、アメリカの宗教系の大学では宗教の必修単位が多くあるなど、その宗教と正面から対峙する必要が出てくるようです。宗教を通して学ぶことになるので、宗教と学問を切り離して考えたい日本人には少し難易度が高いかもしれません。

では、そこそこの成績で入学でき、たとえ奨学金がほとんどなくてもなんとか通い続けることができるような都合の良いリベラルアーツ・カレッジはないのでしょうか。そこで、州立のリベラルアーツ・カレッジです。

見つけるのは簡単です。COPLAC: Council of Public Liberal Arts Collegesのサイトにリストがあります。

州立のリベラルアーツ・カレッジも良いことづく目ではありません。教員と生徒の比が私立より多めです。また、Retention rateとGraduation Rate Performanceも若干落ちます。それでも、研究より教育を重視する姿勢があることにかわりはありません。