SAT改革のあと〜テスト・オプショナルの波

東大併願みたいな頭の良い生徒は別ですが、普通の純ジャパ生徒にとって、SAT/ACTはひとつの壁。Mathはまだ良いのですが、国語(EnglishのWriting&Critical Reading)が鬼門。

だから、純ジャパは、SATが必要な名門校は避けて、一旦コミカレに行くか、SAT不要の学校を狙います。

そんな平凡な純ジャパに朗報が!

その原因は遡ること2016年。

以前のSAT Reasoning Testは、基本のテストといえど、日本の中学受験と同じように、アメリカの高校での学習内容だけでは高得点を望めない内容になっていました。ボーディングスクールやSAT専門の教育機関に行く必要があり、名門大学に貧乏人は行けない仕組みが確立していました。

そこで、2016年のSAT改革です。無料で学習できるサイトFree SAT Practice Resourcesを作るとともに、SAT Reasoning Testをアメリカの高校の授業で習う内容(Common Core)や語彙に合わせ、内容よりも技術が重要なエッセイをオプションにするなど、刷新しました。

すると、何ということでしょう。SATでわかることは、GPAでわかることと重複しているじゃありませんか。

ということで、「現在の学力しか示せないSATは不要ではないか。それよりも、High School PortfolioやAP(Advanced Placement)で生徒の将来性をきちんと見た方が良い」という議論が出てきています。SAT/ACTの提出を任意とすることをテスト・オプショナルと呼び、その動きをTest Optional Admissions Movementといいます。

考えてみると、2+2でコミカレから編入するときは以前からSAT不要ですよね。テストのフルイにかけられないと落ち着かない学生もいるようですが、社会に出ればそんなフルイどこにもありませんよ。昔は輪切り選抜といえば、悪しき教育システムの象徴だったのですが、それを自ら望むというのは、自分に自信がないので何かを根拠にラベリングして欲しいという気持ちの現れだと推測します。

SAT不要の大学リストはこちらです。

More Than 1000 Accredited Colleges and Universities That Do Not Use ACT/SAT Scores to Admit Substantial Numbers of Students Into Bachelor-Degree Programs

留学生にのみSATを免除する大学もありますので、留学生は別のリストを見る必要があります。ちょっと古いですが。。。

Test Optional Colleges and Universities for International Students, August 2016

最新情報は各大学のホームページで確認するか、「International Student Handbook」(College Board 発行)を入手してください。

オプショナルでもSATは出したほうが有利でしょう?と思うかもしれません。確かに有利ですが、提出しなければ合格できないわけではありません。アメリカの大学は現在の成績よりも将来性を重視します。将来性が見える別の材料さえ示せれば、現在の成績はそれほど重視されません(むしろ私立の名門校では、SATよりLegacyかどうかのほうが重要かも?)。

偏差値60前後の高校に通う平凡な純ジャパでも、日本できちんと学業を修め、高校生活でのachievement(目標に向かって努力し実現した経験)をきちんとエッセイで示せば、SATなしでアメリカTOP100前後の大学に入学できます。

あとは、脱TOEFL/IELTS onlyの動きも引き続きあります。

純ジャパが苦手なTOEFLとSATを受けなくてもアプライできる大学は、探せば結構あります。平凡な純ジャパがGPAの次に力を集中すべきなのは、ときにオプション扱いになっている学校独自のエッセイであり、そこに書くべきachievementです。

ブランドを気にするよりも、高校生活をきちんと謳歌して、それを評価してくれる大学を選びましょう。必要なら、そこで自分の専門性を見極め、きちんと学業を残してから、さらに専門的な大学にTransferすればよいと思います。

SATのエッセイはもはや多くの大学で不要です。UCはまだ粘っているので、直接行ける金持ちの留学生にとってはまだ必要です。

Who Requires SAT and ACT Essays (and why they shouldn’t)

Coalitionって? eポートフォリオって?

コモンアプリケーションに続き、アメリカ大学のアプリケーションに関係して、新しい仕組みが出てきています。

「コアリション(Coalition)」です。


アメリカでも日本でも、試験の成績だけではなく、人物評価が重視され、ボランティア活動やクラブ活動など日常の活動すべてが、選考時に考慮される時代です。

そのために、評価の対象になる全ての活動と、その時々の振り返りをあらかじめ記録する必要が出てきたのです。高校3年になってからでは遅いのです。


その記録システムのアメリカ版がMycoalition.orgです。

アメリカでは9年生になったら、学校でのプロジェクト活動やエッセイ、課外活動記録、学習記録、表彰記録など、将来大学にアプライする際に使えるかもしれない情報をとりあえず全部CoalitionのLockerに保管します。

アプライ前はエッセイの作成などをMentorとCollaboration Spaceで共有できます。また、9年生のうちから大学のAdmission Officeとコミュニケーションをとることもできます。

大学側もSATやGPAという間接的な情報ではなく、生徒と直接時間をかけてコミュニケーションをとることで、学生の成長過程が把握でき評価しやすくなります(アメリカの大学は上向きの成績を評価する)。アプライするときはLockerからデータを選び大学にアップロードします。

2018-19年の入学でCoalitionに対応してる大学はこれだけあります。

2018 Coalition College Deadlines


日本ではこれを「eポートフォリオ」と呼び、高校生向けにJAPAN e-Portfolio (文科省委託事業=ベネッセ)が提供されています。これは早速、平成31年度入試から一部の大学で先行利用できます。

民間でもベネッセとソフトバンクがクラッシ(Classi)ポートフォリオというシステムを提供開始しており、JAPAN e-Portfolioへの接続が予定されています。その他に「まなBOX」(河合塾)など学習に特化したポートフォリオもありますが、今後本当に必要なのは、生徒会や部活、ボランティアなど課外活動の記録とその時々の振り返りの記録です。その点で現在のところ日本ではベネッセ一強です。


これらのシステムは、高校全体で一括して利用することで、自動的なメンテナンスが可能になり、データを効率的に利用できます。日本の私立高校で、今年クラッシを導入していない高校は、ちょっと認識不足です。公立高校はJAPAN e-Portfolioの方で我慢するのでしょうか。


ところで、「じゃあ、Coalitionって、留学生も使うの?」ってまず考えるわけですが、留学生は自分が通っている学校と情報を連携できません。とはいえ、利用を拒むものではないので、使ってみるのも良いと思います。

Does the Coalition system support international (non-US) applicants?

JAPAN e-Portfolioやクラッシから自分でデータをコピーし英訳する必要がありますが、Coalitionで登録した志望大学からコンタクトが来ることもあるそうで、中規模以下の大学のInternational Admissions Officeなら、アプライする何年も前から「日本人学生のXXさん」として顔見知りになれます。そうなると、合格したようなものです。

流れとしては、日本のサービスをCoalitionに接続してくれると良いのですが、ソフトバンクなら考えてくれるかもしれませんね。とにかくまず、日本の高校生は全員 eポートフォリオを利用しましょう。

Coalitionはアメリカの有名トップ校が名を連ねたシステムです。今後はコモンアプリケーションと組み合わせて、主流になって来るでしょう。

Full list of Coalition member schools

ちなみに、ニューヨークやテキサス、カルフォルニアなどは、地域共通のアプリケーションがあります。

  • Apply Texas
  • Apply SUNY
  • Cal State Apply
  • MY UC Application

エージェントなしで留学するために参考にした本

本はたくさん読みました。たくさん買いました。以下、買った本のリスト(一部)です。

★★★是非購入すべき ★★購入したほうがいい ★参考にはなる

”International Student Handbook”★★★
・・・必要なTOEFLの点も書いてある。唯一と言って良い留学生用の学校案内。

“Best Colleges”★★★
・・・US NEWSの大学ランキング

“アメリカ留学公式ガイドブック[第2版]”★★★
・・・ビザをとっていざ留学するときに必要。ネットで素人のサイトを見る前に、まず見ておきたい。あとで読み返してそう思う。

“ETS公認ガイド TOEFL IBT”★★★
・・・TOEFL受けるなら買うしかない

“Cambridge IELTS”★★
・・・IELTS受けるなら買うしかない

“Barron’s Profiles of American Colleges”★★
・・・1,650校、意外と参考になった

“Fiske Guide to Colleges”★
・・・約320校、普通。

“The Best 381 Colleges”★
・・・Princeton ReviewのTOP381校

“The Ultimate Guide to America’s Best Colleges”★
・・・TOP300校

“College Handbook”
・・・College Boardの網羅的学校案内。4年制2,200校、コミカレ1,700校。

“Book of Majors”
・・・College Boardから出ている、専攻科目の案内。それほど役に立たなかった。

“Scholarship Handbook”
・・・College Boardから出ている、ものすごい数の奨学金の案内。国内用なので全然役に立たなかった。

“アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準”★★★
・・・アイビーリーグを目指さなくても出願に際して参考になった

“留学で夢もお金も失う日本人~大金を投じて留学に失敗しないために~”★★
・・・UOに合格(条件付き)したけれど、並の奨学金では予算オーバーなのであきらめた。

“ハーバード大学はどんな学生を望んでいるのか? ~日本人が抱く大いなる誤解~”★★
・・・ハーバードを目指さなくても参考になった

“目指せ日米トップ大学ダブル合格―TOEFL JuniorテストからTOEFL iBTテストへ―”★★
・・・Z会発行に負けた。まえがきに泣ける。TOEFL iBT 100を取るための勉強法。

アメリカ大学への合格実績と進学実績

近年、有名進学校で海外大学への合格実績が増えていると言われています。手塩にかけて育てた生徒を、例えば就職に手厚いとか言って、就職活動ばかりで全然勉強しない日本の大学に入れて良いものだろうか、そう思う先生や親御さんが増えていくのは自然なことに思います。

しかし、合格実績はその数字を読むとき注意が必要です。というのも、アメリカの大学合格実績は進学実績と乖離しやすいからです。

注意点として以下のようなことがあります。

  • 出願手数料が高くても1万円前後のため大量に出願できる
  • しかも、1校に1回払うだけ。日本のように試験毎に払わなくて良い。
  • 試験がないので、同時にいくらでも出願できる。
  • コモンアプリケーションのシステムが普及しており、共通の出願申請フォーマットを使って、大量に出願できる。
  • 合格しても入学金は不要な場合が多いので、沢山合格してもある程度の期間は無料でキープできる。
  • ただし、Early Decisionは原則同時に申し込めないので、Early Decisionを利用する学生の合格実績は数が少なくなる。

極端なことを言えば、例えばある学校の合格実績が20校あっても、ひとりで余裕で作れる実績なのです。

逆にいうと、出願の際はコモンアプリケーションを利用して、だめもとで色々な大学に出願することをお勧めします。ただし、Early Decisionは日本で言う「専願」ですから、それは本当に行きたい大学がある場合だけにしましょう。最初はそこが一番と思っていても、もっと良いところから良い条件で合格通知が来るかもしれません。

似たような用語にEarly ActionやRolling Admissionがありますが、これはどちらも縛りがありません。これらのApplyは高校3年の9月頃から始まります。

ToeflやIELTSが十分な人やConditional Admissionで出願する人は、このEarly ActionとRolling Admissionを利用して、9月〜10月に短期決戦することをお勧めします。

ほとんどの大学は、Conditional Admissionで一旦条件付き合格をしておいて、締切までに基準以上のToeflやIELTSを提出すれば、そこで改めて合格扱いにしてくれます。一部の大学はConditional Admissionに奨学金を出してくれませんが、逆に、Conditional AdmissionでもConditionalがはずれた時点からフルの奨学金をあらかじめ約束してくれる大学もあります。

Early DecisionやEarly Action、Rolling Admissionで一旦Reject(=箸にも棒にもかからない)された場合は、同じ大学に再出願(reapply)できません。SATやACTが必要で準備が間に合わない大学は、少し出願を遅らせたほうが良いです。箸にも棒にもかからないわけではないが合格でもない人は、Deferred(保留)としてRegular Decision(一般受験)の結果が出る4月まで保留されます。Deferredの間も、基準点になったToeflやIELTS、より高いSATやACT、追加の功績などを提出して、アピールしましょう。

一方でToeflやIELTSは学業成績ではなく単なる入学条件ですので、条件をクリアすればそれ以上の点数をとっても有利にはなりませんし、Conditional Admissionだからといって選考上不利になることもありません。別に日本の有名進学校でなくても、その高校でGPAを3.4/4.0も取っていれば、アメリカTOP100前後の州立大学程度なら、Conditional Admissionでわりと簡単に合格してしまいます。日本に於いては英語そのものが勉強ですが、アメリカに一旦入ってしまえばそれは勉強のツールのひとつでしかありません。つまり、高校時代は英語ばかり勉強するのではなく、まず全ての教科で3年間を通してGPAをきちんと取ることを優先してください。アメリカの大学だって、条件付き合格の生徒が、急に半年後英語ペラペラになるなんて思っていません。だから、提携している現地の英語学校やExtensionで真面目にしていれば、基準の英語力が付いていなくても、少しくらいはおまけしてくれます(カリフォルニアのように日本人が溢れているような大学は、その限りではありません)。

話がそれましたが、アメリカの大学については、進学実績の方を見なくては実態をつかめません。日本では私立ではなく国公立の合格実績ならある程度実態を反映していると考えられていますが、アメリカでは州立大学でも状況は同じです。

こちらのサイトでは、高校からの海外大学への進学状況(2017年3月卒業)を紹介しています。

日本の高校からの海外大学進学状況