国内大学入試の現場から(新制度の状況)

 2020年度の新制度で入試を受ける高校生のみなさん、この夏休み、大学のオープンキャンパスに行きましたか? 国内入試を検討しているのであれば、最低1校でもかならず行くべきです。僻地でも離島でもです。この年度の受験は、情報がなにより重要です。

 8月中に文科省は、「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間試験について、情報を取りまとめて公表するそうです。

 オープキャンパスでは、次の試験だけでなく、2020年度の試験情報も説明があったはずです。とても情報収集に有効な場です。

 そこで話に出たのですが、英語について文科省は大学側に、2次試験(個別学力試験)で英語をするなら4技能を全部やり直すようにと指針を示しているそうです。各大学のキーポイントはそこをどう判断するかです。

① 完全無視して、今まで通りの2次試験を実施
② 指針に従い、英語の2次試験は実施せず、民間試験のスコアを使用する
③ 英語は4技能を全部やり直す

レベルの高い2次試験を出題してきたた大学としては①で継続したい。
多少英語のレベルが低くなっても良いから、文部省の考え方を尊重して②という大学もあります。②の大学は民間試験の結果を段階的に換算して、2次試験の英語の点数にします。

では、②の大学が学生に敬遠されるかというと逆で、オープンキャンパスの来場者数が増加するなど、まだ現高校2年生の話にも関わらず、すでに影響が出ています。なぜなら、②のパターンは、共通テストが終われば、英語以外の科目に専念できるからです。受験生の負担が大幅に軽減されます。英語が得意な人には、その逆の大学がおすすめです。

Coalitionって? eポートフォリオって?

コモンアプリケーションに続き、アメリカ大学のアプリケーションに関係して、新しい仕組みが出てきています。

「コアリション(Coalition)」です。


アメリカでも日本でも、試験の成績だけではなく、人物評価が重視され、ボランティア活動やクラブ活動など日常の活動すべてが、選考時に考慮される時代です。

そのために、評価の対象になる全ての活動と、その時々の振り返りをあらかじめ記録する必要が出てきたのです。高校3年になってからでは遅いのです。


その記録システムのアメリカ版がMycoalition.orgです。

アメリカでは9年生になったら、学校でのプロジェクト活動やエッセイ、課外活動記録、学習記録、表彰記録など、将来大学にアプライする際に使えるかもしれない情報をとりあえず全部CoalitionのLockerに保管します。

アプライ前はエッセイの作成などをMentorとCollaboration Spaceで共有できます。また、9年生のうちから大学のAdmission Officeとコミュニケーションをとることもできます。

大学側もSATやGPAという間接的な情報ではなく、生徒と直接時間をかけてコミュニケーションをとることで、学生の成長過程が把握でき評価しやすくなります(アメリカの大学は上向きの成績を評価する)。アプライするときはLockerからデータを選び大学にアップロードします。

2018-19年の入学でCoalitionに対応してる大学はこれだけあります。

2018 Coalition College Deadlines


日本ではこれを「eポートフォリオ」と呼び、高校生向けにJAPAN e-Portfolio (文科省委託事業=ベネッセ)が提供されています。これは早速、平成31年度入試から一部の大学で先行利用できます。

民間でもベネッセとソフトバンクがクラッシ(Classi)ポートフォリオというシステムを提供開始しており、JAPAN e-Portfolioへの接続が予定されています。その他に「まなBOX」(河合塾)など学習に特化したポートフォリオもありますが、今後本当に必要なのは、生徒会や部活、ボランティアなど課外活動の記録とその時々の振り返りの記録です。その点で現在のところ日本ではベネッセ一強です。


これらのシステムは、高校全体で一括して利用することで、自動的なメンテナンスが可能になり、データを効率的に利用できます。日本の私立高校で、今年クラッシを導入していない高校は、ちょっと認識不足です。公立高校はJAPAN e-Portfolioの方で我慢するのでしょうか。


ところで、「じゃあ、Coalitionって、留学生も使うの?」ってまず考えるわけですが、留学生は自分が通っている学校と情報を連携できません。とはいえ、利用を拒むものではないので、使ってみるのも良いと思います。

Does the Coalition system support international (non-US) applicants?

JAPAN e-Portfolioやクラッシから自分でデータをコピーし英訳する必要がありますが、Coalitionで登録した志望大学からコンタクトが来ることもあるそうで、中規模以下の大学のInternational Admissions Officeなら、アプライする何年も前から「日本人学生のXXさん」として顔見知りになれます。そうなると、合格したようなものです。

流れとしては、日本のサービスをCoalitionに接続してくれると良いのですが、ソフトバンクなら考えてくれるかもしれませんね。とにかくまず、日本の高校生は全員 eポートフォリオを利用しましょう。

Coalitionはアメリカの有名トップ校が名を連ねたシステムです。今後はコモンアプリケーションと組み合わせて、主流になって来るでしょう。

Full list of Coalition member schools

ちなみに、ニューヨークやテキサス、カルフォルニアなどは、地域共通のアプリケーションがあります。

  • Apply Texas
  • Apply SUNY
  • Cal State Apply
  • MY UC Application

英検 従来方式は不採用

2020年度より始まる「大学入学共通テスト」に英検の従来方式が採用されなかったことには、画期的な意味があると思います。
英検協会は「高校生が全学年に渡り、公開会場や準会場で受験可能な従来の英検はそのまま利用が継続、もしくは拡大するものと思われます。」と声明を出すまでに至っていますが、そうはならないと思います。
従来方式の欠点は、ペーパーで合格しないと面接できないということであり、4技能の間に優先順位を付けていることです。面接が得意でペーパーが不得意な人は、ペーパーが得意で面接が不得意な人に比べ、1次と2次の両方の試験を早期に受験する機会を奪われているのです。4技能を測る試験としては明らかな欠陥だと思います。いや、本当は欠陥なんてないのです。元々4技能を測る目的で設計されていないのですから、それを審査に回したこと自体がおかしかったのです。
大学側もほってはおけないでしょう。

一方で、英検の新CBTや新方式はまだ実施されていません。英検協会の慢心で、2020年の「大学入学共通テスト」は準備不足が決定してしまいました。

2018年夏より英検CBT、2019年度より公開会場実施、1日完結型を実施する予定ですが。公開会場実施と1日完結型は高3限定ですので、高2までは従来型しか受けることができません。一方でコンピュータを使用する英検CBTは2級までしかありません。もう、欠陥だらけです。

国内大学受験事情2018

このサイトには、例えばハーバードに行くような優秀な生徒向けの情報は何もありません。東大と海外大学併願とか言って、高1で「TOEFL iBT 100突破」みたいな才能の大盤振る舞いじゃなくて、高3になっても「TOEFL iBT 45」のような生徒のために、限られた才能を最大限活かせる情報を提供したいと思います。

で。

限られた才能で海外大学を目指す生徒も国内大学と併願してみたいということで、ここ2〜3年の国内大学受験事情に触れてみたいと思います。

ここ2〜3年、国内大学の受験現場には大きな嵐が吹いています。まず、2020年度(2021年1月)から始まる「大学入学共通テスト」。ここで、制限付きながら英語の外部試験を導入します。

認定されたのは次の8種類。

  • ケンブリッジ英語検定
  • TOEFL iBT
  • TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests
  • IELTS
  • GTEC
  • TEAP
  • TEAP CBT
  • 英検(1日完結型、公開会場実施、4技能新方式CBT)

従来型の英検は4技能試験と認められず却下。その他のタイプの英検はまだ実施されていません。4技能新方式CBTが2018年8月に開始で、1日完結型と公開会場実施は体制が整わず2019年からの開始です。

「2020年度からの話でしょ、カンケーないし。」って思っているあなた。実際にはもう随分導入が進んでいるんです!この1〜2年で、英検、TOEFL iBT、IELTSなどの成績を提出すると優遇がある大学が爆発的に増えています。従来英語の外部試験といえば上智のTEAPが有名でしたが、海外大学に通用するTOEFL iBT、IELTSの採用が増えているところが注目点です。特に国際系の学部は海外留学できる生徒が欲しいので、最初からTOEFL iBT、IELTSが高い学生の方がいいに決まっています。

海外大学で使える英語なら、より実践的なTOEFL iBTを勉強するのが一番です。高1になったら、どれくらい難しいか、試しに受けておきましょう。そのうえで、高2からそろそろIELTSも受けておきましょう。ちなみにイギリスではTOEFLが使えません。また、純ジャパはIELTSの方が良い成績をとれることが多いです。IELTSの欠点は、TOEFLの「受験料が高い」に加え「回数と受験会場が少ない」です。特に国内の共通テストで利用が始まる2020年度は、予約が非常に取りにくくなるのではないかと思います。

従来型の英検は圧倒的に受験料が安いのですが、回数も圧倒的に少ないのが欠点です。準1級を取るとアメリカやオーストラリアで使える大学がありますが、年3回しかチャンスがなく、しかも1次に合格しないと2次が受けられない従来型の英検をターゲットに勉強するのはちょっと考えたほうが良いかもしれません。

現状では大学によってそれぞれの外部試験の基準点が違います。自分が得意な外部試験の基準点が低い大学を選ぶと有利です。

大きな嵐の2つ目は「東京23区内で大学定員増の原則10年間禁止」です。

これも、水増し合格の厳格化という形で既に始まっています。

従来、首都圏の大学では、定員を上回る水増し合格を出して学生を確保する大学も多かったのですが、文部科学省が定員を大幅に超えた場合、国からの補助金を出さない・学部新設を認めないというペナルティを2016年度から2018年かけて段階的に始めたので、去年・今年の一般入試では、受かるはずの点数をとってもまさかの不合格という現象が出てきています。また、少子化に向けて学部の定員を絞って、大学院を充実させる方針の大学も出てきています。

特に国際系の学部はオリンピックに向けて注目度も上がっており、去年のデータは使えないと思ったほうがいいです。

今後の中堅大学は、AOや推薦入試で確実に生徒数を確保し、最後の一般入試では合格者を絞り、見かけの偏差値を上げるという傾向が強くなっていくと思います。もう既に主戦場はAOや推薦入試に移ってきています。また、これから5年間で5%も18歳年齢が減少するにもかかわらず、今後10年は特に首都圏の上位の大学の競争率は変わらず、むしろ上がることさえ考えられます。

今日本の大学は、アメリカの大学の後追いをしています。彼らが二言目に口に出すのは決まってアメリカやカリフォルニアの大学事情です。内申が悪くても一般入試で逆転なんてことは、将来過去のものになるでしょう。