音楽: Longtime Favorites (初回限定盤) [LIMITED EDITION]
私の中での竹内まりやは、オリジナルアルバム「Quiet Life」(1992年)、ベストアルバム「IMPRESSIONS」(1994年)で止まっています。 今回のレビューに限っては、店頭での試聴のみとなりました。試聴して、今回も買う価値無しと判断したからです。
1曲目の「悲しき片想い (YOU DON'T KNOW) 」から始まる前半は、山下達郎氏が恐れていた「ナツメロ・カラオケ」の雰囲気です。特に1曲目はシングル「告白」のカップリングトラックのリミックス・ヴァージョン。これが、傷口を広げています。結局、どんなに編曲で工夫しようと、ボーカリストの技量と取り組み方なのでしょう。まるで、三流演歌歌手とカラオケで宴会しているような印象です。これは、演歌歌手を馬鹿にしているのではありません。たとえば坂本冬美さんが同じことをすれば、もっと良いものができたかもしれません。
服部克久氏が編曲、田中信一氏がレコーディングエンジニアの「いそしぎ(THE SHADOW OF YOUR SMILE) 」「風のささやき(THE WINDMILLS OF YOUR MIND) 」は、おなじみのまりや節で安心できる作りになっています。 服部克久氏がストリングスを編曲した「恋のひとこと (SOMETHING STUPID)」では、大瀧詠一氏がアルバム一枚分に相当する活躍をしています。たとえ相手が竹内まりやさんでなくても(新人のアイドル歌手でも)、同じクオリティーのものができたのではと思います。ちなみに、 ストリングスはロンドンのアビー・ロード・スタジオで、ギャヴィン・ライト氏のストリングスを収録しています。
と、ここまでは、3曲程度がアベレージに達しているので、星3つ半なのですが、このアルバムに付けられたコピーが私にはとても気になりました。
「今、カヴァーはオリジナルを超える。」
私には、そこまで言い切れるほどのボーカリストの技量と意気込みが伝わりませんでした。明らかに全ての曲が、オリジナルを超えていません。「恋のひとこと (SOMETHING STUPID)」も、大瀧詠一氏は良いのですが、竹内まりやさんがうまく歌えていません。世界的なスタンダードを「超えた」というのは、ずうずうしいです。
スタンダードの名曲をベテラン女性ボーカリストが真正面からカバーという企画では、ANRIさんの「SMOOTH JAM 〜Quiet Storm〜」が思い浮かびますが、そこでのANRIさんの技量と意気込みに比べると、今回の竹内まりやさんのアルバムは、魅力に乏しいです。
今回の試聴環境では、いつもの機材を使えなかったので、音質的な評価はできませんでした。もしかすると、音質の良い環境で聴けば作品の価値やボーカリストの評価が倍増するのかもしれません。
しかし、結局その日は、隣に置いてあった矢井田瞳さんのアルバムを試聴して、そちらの方が良かったので(1曲目が)、初めて矢井田瞳さんのアルバムを買いました。そして、久々の純CDであるMISIAさんの「星空のライブ」も買い、家路につきました。