ベスト盤というか、アンソロジー(選集)。
本人による選曲、全曲解説。1999年の「History」(BMGファンハウス)と比べると、幅広い選曲。それもそのはず、ナイヤガラ(ソニー)、クラウン、ファンハウス、MIDI、東芝EMIを縦断している。
リマスターはONKIO HAUSの中里正男氏。 音質は古い録音も古さを感じさせず、自然でバランス良し。
「若き日の望楼」(ロマンティック)は、「History」にある「Amour levant」(カイエ)の元歌。続く「新しいシャツ」と続けてアルバム「ロマンティック」独特の線の細さが良い。解説にもあるが、若さは未熟であっても、かけがいがない。
続く「黒のクレール」は、吉田美奈子さんの「BLACK Eyed Lady」、ラジさんの「ブラックムーン」とあわせて、キャンペーンに使われたもの。CMタイアップという状況とかみ合って、3曲の中では一番目立っていた。このあたりから、線の太さが出てきた。名曲。特に「いつか風にくちてしまう」の、ひらひらと下降していくメロディーは圧巻。坂本龍一氏は恥ずかしかったらしいと知って、2度びっくり?
「横顔」「突然の贈りもの」は、「pure acoustic」のバージョン。特に「突然の贈りもの」はレザ・パネのピアノと相まって、彼女のベストの作品だ。必ず、聴くこと。
2枚目の「美しい人よ」はシングルバージョン。小倉博和氏のアコースティックギターと朝川朋之氏のハープが、オルゴールのように心にしみる。 このアルバムも後半に入り、感じることは、ミュージシャン一人一人が音楽を大切に楽しんでいること。繊細さとおおらかさが同居している。
「Shall we dance?」は徳間ジャパンのサントラから。 映画「東京日和」の「ひまわり」は作詞、作曲。ここでも小倉博和氏のアコースティックギター、いいですね。でも、他の曲と比べ音が違う。サントラそのものの音作りなのか。
「Beautiful Beautiful Songs/歌が生まれてる」は、奥田民生氏、鈴木慶一氏、宮沢和史氏、矢野顕子さんと2000年夏に行ったコンサートから。「LIVE Beautiful Songs」としてEMIから出ている。内容は即興的なのだが、バックボーカルは鈴木慶一、矢野顕子というところが貴重?
「あなたを思うと」は、小倉博和氏と佐橋佳幸氏のアコースティックギター、林立夫氏の優しいドラム。「note」も聴きたくなる。ボーナストラックは、同じく小倉博和氏と佐橋佳幸氏のアコースティックギターで、2001年のライブ音源。
もう少し躍動感が欲しくなるときもあるが、心温まるアンソロジー。