「繊細で芳醇なワインのようなAOR」
全曲カバーというだけではなく、オリジナルがスタンダードとして誰もが認める名曲ぞろいというところが非常に挑戦的なアルバムです。 今現在のANRIさんの実力が世界のどこにあるのかを確認できてしまいます。
通常のカバーアルバムでは、オリジナリティーと称して原曲と違うアレンジをとることで直接の比較を避けるものが多いのですが、このアルバムでのリー・リトナー氏は原曲のイメージを壊さない控えめなアレンジをとっています。 AORを基調にしつつも原曲と同じ方向をとり、唯一で最良の舞台を提供していると思います。
ボーカルの良し悪しがはっきりとわかるこの舞台で、ANRIさんは自分自身の解釈を込めた繊細で美しいボーカルを披露しています。 原曲と比べると日本人の感性が良い意味で出ていァ?と思います。 特に後半の「If」「Hard to Say I’m Sorry」「Somewhere in Time」は素晴らしい出来だと思います。
ライナーノートにはリー・リトナー氏のコメントがありますが、そこで「おそらく彼女の今までの作品の中でも最も重要な一枚になる作品」と言っています。 確かにANRIさんのアルバムの中では星5つです。考えられる最高の出来だと思います。
最初は、やはり原曲を越えていないなと思っても、繰り返し聴いているうちに原曲を超える何かを見つけることができるアルバムです。 雰囲気は都会を走る静かな車で聴きたいアルバムに仕上がっていると思います。 パッケージのアートワークも良いですね。
最終的に星4つの理由は、全ての人に無条件でお勧めするというよりは、ANRI的解釈のバラードやAORを聴きたい人向けだと思うからです。 買ってから何度も聴いた大好きなアルバムですが、カバーアルバムであるがゆえにやはり原曲の存在は無視できません。